ディレクター南貴之の欲しいを形にした、こなれた大人のためのGraphpaper流シグネチャーデニムはここが違う。
これまでGraphpaperの定番デニムといえば、5ポケットとスラックスが合体した縦落ちしないタイプを展開していました。だけど、最近、自分の中で5ポケットの太いデニムパンツ・ブームが再燃し、欲しくなってきたので作ることにしました。
昔のリーバイスのワークシャツと501XXにレッドウィングを合わせる、90年代的なワークウェア系スタイルをきれいに作れないかと思って。当時はドカンとしたシルエットが主流でしたが、そこは自分がテーパードのほうが好きというのもあり、渡りがあって裾にむかって細くなっていくよう、形をすごく考えて、現代的に落とし込こみました。そして、以前なら13〜13.5オンスといった厚いデニムが良かったけど、歳を取ると、結局、重いとはかなくなってくる。なので、いわゆるヴィンテージのセルヴィッジデニムのようなガチガチな見え面だけど、10.5オンスという軽さで作っています。特にグレーが気に入っていて、縦糸が黒で横糸がグレーで、色の出方がいい。全体的に色の落ち方もきれいなはずです。
バギータイプはウエストがゴム仕様で、80年代のスケーターがはいていたようなステューシーとかのハーフパンツが好きで、それをリバイバルさせ、そのままデカくしました。共に、アメカジやストリートでのワークウェアがブームだった時代へのオマージュです。
シャツは、昔のリーバイスのもので実際にあったデザインを元に、サイズ感や肩線の傾斜などシルエットはGraphpaperのバランスに変更しました。たくさん入っていたステッチが鬱陶しい感じだったので減らし、よくある金茶ではなく、インディゴにはライトグレー、グレーと黒には生成りの糸にして、うちらしくモダンできれいに見えるようにしています。前立てのステッチはワークシャツのディテールを踏襲しつつ、本来はタックボタンのところを、一番上のボタンが超絶留めにくいし、メタルなので重くなるから、貝ボタンに変えました。
オンスは軽いのに、軽さを感じさせない見え面のデニムって意外にないんです。軽いとそれなりに薄そうに見えるから、その限界ギリギリのところを攻めています。厚そうな色出しなのに、実際は薄くて軽くて着やすい。しかもウエストゴムのバギーパンツは生地が重いと落ちてくるし、あくまでもシャツとパンツなので、そこを重視しました。
また、普通デニムパンツの縫製はポケットのところで止めて、そこから下は割りで縫うから縫い目が出ないんだけど、うちではその下も軍パンやチノパンみたいに巻き縫いしています。Graphpaperのシグネチャーは、ウエストから裾まで全て巻き縫いでステッチを見せるが基本。割り縫いは裾をロールアップすると耳が出てきますが、耳よりもステッチを見せたかった。デニムに対して、ずっと割らないで巻きで縫えばいいじゃんと思っていたので、一見気づかないけど、意外に他にはなく逆にポイントになっていてかっこいい。みんな本家本元にならって耳を付けたいんだろうけど、僕はレプリカを作りたい訳ではないから、こっちの方が断然好きです。
デニムの本質を追求するのは、他にやってくれるブランドがいっぱいあるし、僕は今そういう服を着なければ、興味もない。マニアックにやるなら、いっそ古着買えばいいじゃんと思っています。「デニムは好きだけど、こういうのなかったよね」とか「歳を取ったし、重いのも厚いのも無理で、育てる気力もないけど、これならいいじゃん」という人たちに向けいてるので。ブランドコンセプトにもあるように、いろんな服を着てきた人が最後に着る服でありたいので、着てて楽とか着やすい、でもアイデアがあって、見る人が見ればわかるというところがベースにあります。耳もそうですが、いらないものはいらないと言い切っているだけで、服をわかっていない人が作っているわけではないということは理解してもらいたい。わかった上で、あえてやらないという選択をしています。