Tシャツは、ブランドのこだわりや姿勢が特に色濃く表現されたアイテムだ。
それは、直接肌に触れる機会も多い、
毎日の暮らしに寄り添うデイリーウェアの筆頭。
シンプルでずっと着るものだからこそ、
素材に、製法に、肌触りに、一切妥協しない、
究極のベーシックを目指して作り上げられている。
今回は、グラフペーパーのシグネチャーアイテム、Tシャツの話。
吊り編み機なのに目を詰めて編んだ、
２枚組パックTシャツとオーバサイズTシャツ。
ー今回はTシャツのお話を伺います。まずは、グラフペーパーのシグネチャーアイテムのひとつでもある、パックTシャツとオーバサイズTシャツから。
南：おかげさまで好評なんですが、これ、吊り編み機を使っているから、なかなかたくさん作れないんです。一般的な丸編み機（シンカー編み機）は、200本前後の糸を同時に編み込んでいくんですが、うちが使っている吊り編み機は2本。365日、24時間休みなしで編み続けていただいているのに、まったく供給が追いつかないという状況です。
2-Pack Crew Neck Tee
Price：¥18,700 (tax in)
Color：WHITE / GRAY / NAVY / BLACK
Size：2 / 3 / 4
モデル着用サイズ：4 / 身長：182cm
ー 一般的な機械の100分の１のスピードですか!?
南：しかも、丸胴で編んでて、要は脇はぎがないでしょ？ だから、１寸で１サイズしか作れないもんだから、ぜんぜん追いつかない。だから、お店でもサイズが切れていたり、色がなかったりがたびたびね。できればいつでも在庫がある状態にしたいので、ずっと編み続けて、ずっと縫い続けてます。そんな悩みを解消すべく、一般的なシンカー編み機と僕たちが使っている吊り編み機の中間くらいのスピードの機械で作ってみようか、なんていうことも考えたんです。そっちだともうちょっとスピードが上がるし、機械も空いているし。今のTシャツと同じ糸、同じ調整をしてもらって、試し編みしてみたの。
ー良い案に思えますが、どうだったんですか？
南：ダメでした。思うように仕上がらないです。
ーなぜ、その吊り編み機にこだわるんでしょうか。
南：一番の理由は風合いです。本来、吊り編み機で編んだ生地というのは、柔らかくてスカスカというか、空気を含んでふっくらしているのが売りなんですよ。でも、グラフペーパーのTシャツは、度詰めしてるんです。それで、余計に手間がかかってるんですが。
ー吊り編み機特有のふんわり仕上げにしていないんですね。
南：普通の丸編み機で度詰めすると、バツバツに詰まって固くなるんですが、吊り編み機でやると、なんていうか、いい具合になるんだよね。あくまでも僕の好みの“いい具合”なんですけど、ほかのスタッフたちも同じ意見でした。でも、世の中にある他のTシャツとはちょっと違う作り方、ちょっと違う肌触りになってる。だから別の機械で調整してもらってもやっぱり無理だな、という結論に達しまして。この風合いはこの吊り編み機でしか出せないんです。
S/S Oversized Tee
Price：¥18,700 (tax in)
Color：WHITE / GRAY / NAVY / BLACK
Size：ONE SIZE
ーパックTシャツとオーバーサイズTシャツは同じ作り方なんでしょうか？
南：糸や仕様、設定は同じですが、オーバーサイズTシャツは、24寸っていうサイズの機械で編んでいます。一般的には、24寸で編んだ生地は解体して使うことが多いらしいけど、グラフペーパーは、丸のまま使ってるっていう贅沢品でございまして（笑）。パックTシャツと比べると、原料の量もかなり多く使っています。
定番のTシャツに加えた
“ヘビーウェイト”というバリーション。
ー昨シーズンから登場した、ヘビーウェイトTシャツについても教えてください。
南：ヘインズとかギルダンとか、定番って言われているTシャツって、肌着用の普通のTシャツのほかに、ヘビーウェイトが必ずあるじゃないですか。あれがやりたかったんです。ヘビーウェイトっていう選択肢が。グラフペーパーのパックTを着てくれている人の中にも、もっとベビーウェイトなのが欲しい人がいるんじゃないかなって。まぁ、自分が欲しかったから作ったんだけど。そんな発想から始まっていて、あとは、どれだけいいものが作れるかを追求しました。
Heavy Weight S/S Oversized Tee
Price：¥19,800 (tax in)
Color：WHITE / GRAY / NAVY / BLACK
Size：1 / 2
モデル着用サイズ：1 / 身長：182cm
ーパックTやオーバーサイズTとの違いは？
南：パックTとオーバーサイズTは、30番双糸という糸なんですが、このヘビーウェイトTシャツは、30番三子、いわゆる3本撚り。だから糸を1.5倍太くしたわけ。で、それを、サイズ1は20寸、サイズ2は21寸分で編んでいるんだけど、糸が太くて、押し出されるから寸が広がって、まあだいたい24寸ぐらいに仕上がるんです。サイズ感としては、さっき紹介したオーバーサイズTシャツと同じくらい。
ー基本的な作り方は一緒なんですね。
南：そうなんだけど、質感が変わっているんですよ。僕はこのヘビーウェイトの質感がめちゃくちゃ気に入って、最近は、もっぱらこればかり着ています。1枚で着るのに最高なTシャツというか。
ー触ってみると、確かに違いますね。
南：撚ってるからなのか、少しシャリ感があるような。パックTと比べると肌離れがいい気がするんです。
ー厚手だけど、夏に着るならこちらがいいと？
南：そう、夏に着るには厚いのかなって思ったんだけど、意外といい！ 生地が多い分、汗もたくさん吸うしね（笑）。 あと、洗った時の風合いもめちゃくちゃいい。双糸よりも三子の糸のほうが仕上がりの形状が円に近くなって、一体感がでるんです。それで、双糸のパックTとはまた違った表情になるんです。お客さんたちも、まだこの違いに気づいてない人が多いんじゃないかな。パックTの人気の影に隠れている感じ。着てもらえれば、違いがよくわかると思います。
ーパックTとヘビーウェイトTで、着分けはしていますか？
南：そうですね、もちろん、みんなの好み次第なんだけど、自分なら、シャツとかのインナー的な使い方だったらパックT、夏場に1枚で着るんだったら、断然ヘビーウェイトがいいですね。全体的にハリがあってしっかりしてるから、着た時にフォルムがバキッとしてるっていうか。ただ、パックTの方が薄いとはいっても、あくまでもヘビーウェイトと比べての話で、全然１枚で着られるくらいのボリュームで作っているから、どちらを選ぶかは好み次第です。
ー原料や仕様が一緒なのに、2本で撚った場合と、3本で撚った場合とで、これだけ違うっていうのが面白いですね。
南：糸にかける撚りの強さは、2本撚りよりも、3本撚りのほうがやや緩く、柔らかく撚っているだけど、先ほど話した通り、編む時に目を詰めていて。柔らかい原料で固く編むって、ちょっと矛盾してるんですけど、その矛盾さがいいのよね。ちょうど良くなる。それが好きなんです。
S/S Oversized Tee
Price：¥22,000 (tax in)
Color：WHITE / GRAY / NAVY / BLACK
Size：1 / 2
モデル着用サイズ：2 / 身長：182cm
ーヘビーウェイトのバリエーションは、ショートスリーブとロングスリーブ。色はホワイト、グレー、ネイビー、ブラックの4色でしたね。
南：そうそう、またこのロンTも良くてさ。
ー少し離れて見たらスウェットと勘違いしそうなボリューム感ですね。
南：贅沢品ですね。これがまたいい感じのハリ感でよく着ています。
ー贅沢品が多いですね（笑）
南：現場に行って、こんなことできないか、あんなことできないかと、編んでる人たちと話して、試してを繰り返して、ようやく辿り着く頃には、どうしてもね。シンプルなTシャツですが、細かいところまで、とことん追求していくとこうなっちゃうんです。
