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Text:Rui Konno

抜群の保温性や耐水性とミニマルデザイン。もはや説明不要な水沢ダウンを擁するデサントオルテラインとグラフペーパーとのコラボレーションも、今年ではや6年目。試行錯誤を繰り返してきたこれまでのどのモデルよりも、今回は協業の特別感が際立つものになっている。その完成までの経緯を、南とデサントジャパンの大田 晃輝さんが振り返る。

「レブロンと変わんないの? 俺」(南)

―今日はグラフペーパーとデサントオルテラインのコラボレーションについて南さんに訊けたらと思っていたんですが、デサントさんチームも来てくださったんですね。

南貴之(以下南):うん。細かい仕様の話をしていただくには、って。俺、細かい部分のことは全然わかってないから。

デサントジャパン大田 晃輝(以下大田 晃輝):(笑)。MDの大田 晃輝です。よろしくお願いします。

南:つくりだとかクオリティだとかっていうのは、デサントのみなさんたちがやってくれてることで、俺はこうしたい、ああしたいって言ってるだけだから。

―なるほど。このコラボ、気づいたら“恒例の!”とかって言われることが多くなったように感じるんですが、始まりはいつ頃だったんですか?

南:いつだろ? 201…9? 2019年か。そこから毎年秋冬、途切れずにやらせてもらってます。

―それはもう、恒例ですね。

南:最初は俺がデサントさんの展示会に行って水沢ダウンを着てみたところからなんだけど、「細くて着れねぇよ!」ってなって。一番デカい海外サイズとかも出してきてくれたんですけど、それでも小さくて、「これは俺はつけれない(オーダーできない)な…」って。「いや、別にお前だけが着るワケじゃないんだから!」っていうのがたぶんみなさんのツッコミどころだったと思うんだけど、そんなことは気にせず、「大きいやつ、つくれないの?」みたいなワガママを言って。

―なんか聞いてて申し訳ない気持ちになってきましたね。

大田 晃輝:(笑)。

南:それでやってくれるっていう話になったから、もう「やった!」って。最初はマウンテニアからだよね?

大田 晃輝:そうですね。

南:インラインの“マウンテニア”っていうモデルの形を大きくしてもらって。大きくって言ってもただデカくしただけじゃなくて、細かい調整をめっちゃしていただいたと思うんですけど、単純に「どんな内容のコラボレーションですか?」って聞かれたら「大きくしただけです」っていう話になっちゃう。

―そのまま書いたら異様にあっさりしたプレスリリースができますね。

南:本当にそんな感じ。だけど、俺みたいなことを感じてた人、いるんじゃないかな? とは思ってました。もちろん、デサントのダウンはちゃんと理由があって体にフィットするようつくられてたはずだし、デザインもいいなと思ってたんだけど、いかんせん入らなくて。自分がダウンみたいな体なんでね。笑うとこですよ、ここ。

大田 晃輝:(笑)。社内でも、「こんなに大きくして大丈夫!?」って言われましたね。4XLとか、日本で展開したことがないサイズをベースにして、それを調整したり。一回、アメリカのブランドとコラボレーションをしたときにレブロン・ジェームズ用の特注サイズをつくったことがあるんですよ。それと今回のモデルがだいたい同じくらいのサイズ感です。

南:え、レブロンと変わんないの? 俺。

―(笑)。向こうは身長206cmとかですけどね。

南:仲良くなれそう。でも筋肉とかもすごいじゃん?

大田 晃輝:すごいですね。だから、5XLとかをベースに着丈を長くしながらつくりました。

―すごいエピソードですね(笑)。でも、ただ大きいダウンをつくるだけなら南さんも自分たちでできないことはなかったんじゃないですか?

南:そうだろうね。でも、この製法って水沢の工場じゃないとできないでしょ? ダウンパックを縫わずに圧着で留めるっていうのは。だから、この着心地を俺らがつくろうと思ってもつくれない。
- 水沢ダウン特有の ダウンパック構造

―これってどういう構造になってるんですか?

大田 晃輝:ちょっと言葉で説明するのが難しいんですけど、ダウンって元々内側にダウンパックっていう羽毛が詰まった部屋があって、ステッチをかけてキルティングにしてそれをつくっていくんです。水沢ダウンはテープと中生地を縫い合わせて圧着することで表にステッチが見えないようにしてるんです。だから中のダウンも出てきにくくて。

南:そうだよね。

大田 晃輝:これを実現しようとするとまずはダウンを詰める機械とシームシーリングをする機械が最低でも必要になるんですけど、デサントの水沢工場はたまたまダウンウェアもつくってたし、スキーウェアや防水のシェルジャケットもつくってたので、そのふたつを組み合わせたらおもしろいんじゃないか、っていうところが始まりです。この両方の設備がある工場って日本ではほぼ無いので。

南:なるほどね。何年も一緒にやってるくせに「へぇ〜」なんつっててすみません。

大田 晃輝:(笑)。

南:でも、それまで自分にはダウンを着る習慣ってあんまりなかったんだけど、デサントさんと一緒にやるようになってからは、だいたい真冬はダウン着てるね。

―ダウンをあまり着なかった理由と、逆に水沢ダウンは着る理由は何でしょう?

南:うーん。水沢ダウンはやっぱりミニマルなんだよね。それがすごい好きなんだと思う。表面的なデザインの話だと。それ以外のダウンってフラットすぎるか、カジュアルすぎるかの両極がほとんどだよなと思っていて。それに、やっぱり着やすいんだよね。水沢ダウンは。何でなんだろう?

大田 晃輝:生地が4WAYストレッチだったりとか、ダウンが必要ないところには入れてないとか、いろんな理由があるんですよ。

南:そういうことなんだ。肩が凝らないっていうか、乗っかってる感じがないんだよね。着てもらえばすぐわかると思うけど。他にもダウンは持ってるんだけど、結局これを着ちゃう。

「僕ら単体ではできないアプローチ。それがおもしろい」( 大田 晃輝

―最初にインラインよりも大きいダウンをつくるとなって、大変だったのはどんな部分だったんですか?

南:「構造、体にフィットするようにパターンを組んでるから、大きくするのは設計的にNGかもしれない」みたいなことは言われた気がする。要は、全部やり直さないといけないって。今でこそ、毎年ファーストサンプルでかなり良いのが上がってくるけど、最初は長いの短いのって、何度もいろんなバランスを変えてみたり、けっこう大変だったよね。

―それでもやってみようとなったのは、やっぱりデサントさん側にも光明があったということですか?

大田 晃輝:そうですね。僕らがインラインでやるものは“できるだけ体に密着させて暖かく”っていうものが多くて、スポーツブランド屋さんとしてはそっちに行ってしまいがちなんですけど、グラフペーパーさんとのコラボレーションはあくまで都市で着るためのものなんで、僕ら単体ではできないアプローチで。それがおもしろいなと思って色々試行錯誤しましたね。

南:俺でも着られるっていうのは前提だったんだけど、第二条件として、俺じゃなくて痩せてる人が着たときにどう見えるかっていうのは重視してて。それで、最初のサンプルが上がってきて細い人に着せてみて、「超カッコいいじゃん!」ってなって。やっぱ、これはイケるなと。先立っては調子に乗ってシェルまでつくっちゃって。

―先の春夏ですよね?

南:うん。それも最初はビビってたけど、あっという間になくなっちゃった。

太田:早かったですよね。ダウンの“マウンテニア”のデザインをシェルに落とし込んだのが、前回別注していただいた元のモデルの“クレアス”っていうもので、オルテラインとしては顔となるデザインを、春夏・秋冬両方でフィーチャーしていただいたっていう流れでした。

―これまでの経緯が見えてきたところで、いよいよ今回のモデルについてもお聞きできたらと。

南:ポイントはフードなしのスタンドカラーっていうところなんだけど。前回あったフードをなくした形。確か、デサントさんの展示会に行ったときにスタンドカラーのダウンがあったんだよね。

大田 晃輝:「このシルエットいいね」っていう話をしましたよね。

南:うん。元々、フードがちょっとジャマだなと感じることがけっこうあって。何でかって言うと、俺ショルダーバッグをよく斜め掛けするんだけど、そのときに引っ掛かるのが煩わしくてしょうがなくて。あとは肩傾斜だよね、特徴は。

―傾斜がさらにきつくなったっていうことですか?

南:と言うより、形がまたちょっと違って。前回はセットインだったんだけど、今回はコートみたいなスプリットラグランになっていて。ベースは“アンカー”っていうモデルのフードを外したデザインなんだけど、肩周りの構造とかは“マウンテニア”になってる。
- 肩周りの構造 スプリットラグラン

―ハイブリッドで、新しい形になっていると。

南:はい。存在しなかったモデルってことですね。徐々に既存のものをアップデートさせていって、5年かけてスペシャリティにさせていきました。全部自分で着てきたから、「肩のつくりはこのときのが良かったな」とか、そういう無茶を色々言ったんだけど、デサントさんもいよいよ俺の面倒くさい好みをわかってくれたなって。

大田 晃輝:ベースの“アンカー”と“マウンテニア”の型紙を融合させるところで肩周りの動きやすさの計算とか、その辺りの微調整はパタンナーもなかなか苦労してました。

南:ありがとう。いいですよ、「嫌だった」ってはっきり言ってもらっても。

大田 晃輝:いやいや(笑)。でも、僕らも水沢ダウン自体にミニマルさがあるというか、正面から見たときのたたずまいがいいなっていう感覚は元々あったんです。それを活かしながら調整するのはけっこう難しかったですね。

南:今まではベースのモデルがあって、それのシルエットとかディテールを変更してた感じだったけど、今回はまったくインラインとは別物ができちゃったみたいな。だから、今までで一番コラボレーションらしい気がする。ラックに掛かってる状態できれいな立体になってるあたりとか、本当にすごいパターンだなって思うよ。



発売日
2024年11月23日(土) 12:00~
※店頭・WEB STORE同時発売

Price:¥125,000+tax 
Color:BLACK
Size:O/S

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